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【相続特集】なぜ、隣の相続はあんなにもめたのか-12:チョット待て、親の余計なひとことが相続のトラブルを引き起こす。

「かあさん、今日はもう一杯作ってくれ」

石田達也は糖尿病を気にして
酒の量を控えていたのだが、
大口の取引が決まった上に、
娘・梨花が孫を連れて久々に遊びに来たので上機嫌だった。

少し飲み過ぎたのだろうか。

普段は無口な達也が娘にこういったのだ。

「家も会社も長男の隆男にやるつもりだ。
だけど心配するな。
ちゃんとお前にだってお前名義の預金を
2,000万円残してあるからな。」

「おっと、お前にこのことをいったことは、
母さんには内緒だぞ」

その後、達也の糖尿病は急速に悪化した。

ワンマン社長である達也の病状悪化つれて、
会社の業績も急速に悪化していったのだ。


加えて長期の療養に治療費がかさんだ。

3年後に達也が他界したときには、
あれほどあった現預金は底をつき、
妻の実家から援助を受けるまでになっていたのである。

達也の葬儀が終わった後、
隆男は涙を浮かべながら
絞り出すような声でつぶやいた。

「あの会社は、オヤジの力で持っていたようなものだ。
私が引き継ぐことはできないよ。」

「オヤジの生前、税理士に調べてもらったら、
今会社を止めるとオヤジの遺産は、
資産よりも負債の方が多くなるらしい。」

「そこで、私は相続放棄をしようと思うのだけど、
姉さんはどうする?」

お嬢様育ちの梨花は、
会社がそこまで火の車であったことに
ビックリしたようである。

しかし、オヤジの借金を背負うつもりは全くないようだ。

「それじゃ、私も相続放棄をしようと思う。
手続きは隆男ちゃんにまかせるわ」

隆男には予想通りのことばだった。

ただ一つを除いては。

「でもパパが私の名前で残してくれた
2,000万円だけは私のお金ですからね。」

* * *

親の願いは
「自分が死んだあとも兄弟仲良くしてほしい」というもの。

しかし、実は、その親が相続のトラブルの火種を
わざわざ作り出している場合があります。

それは、「余計なことを言う」ということです。

「おまえには、嫁に行くかもしれないが、
ちゃんと1,000万円の預金は
お前の名前で作ってあるからな。」

あるいは「実は、お前名義で生命保険に入っている。
まさかの時にはそれを使え」など、
生前に余計なことを言う方が多いのです。

酔った勢いの軽い気持ちでおっしゃったのかもしれません。

ただ、「言ったほうは忘れているかも知れませんが、
言われたほうが間違いなく覚えている」
のです。

実際にその金が残っているのであれば、
問題はないでしょう。

しかし、中にはそのお金を商売の都合や
病気療養のために使ってしまった場合もあるでしょう。

その時には、期待をしている遺族が
「お父さんは私の名前でお金を
残してくれていると確かに言った!」と言い出し、
相続の時に大きなトラブルになるのです。

いやいや、笑い事ではありません。

事実「パパは私の名前で作った預金が
あると間違いなく言った。
あんたが私のお金をとった。泥棒だ!」
と先妻の娘が後妻を訴えた例もあるのです。

そうなると、いくらお金の出し入れを
説明してもまず納得してくれないでしょう。

「ない」ことを証明するのは非常に難しいです。

「財産をどう分けたいか」という考えは、
必ず相続人全員に伝える必要があります。


このように個別に「お前にはこれを残してある」
というような話をするということは、
「円満な相続を実現したい」と願っているその人が、
わざわざトラブルの種を作っていることをお忘れなく。


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